新型コロナウィルス感染症のの影響によって、業績が悪化している企業が増加しています。
今後の資金繰りや経営改善をするうえで、役員報酬の減額を検討する経営者も多いと思います。
役員報酬を減額することで、減額した分赤字が解消するとともに、社会保険料の会社負担分を削減することができます。
また経営者自身の、所得税や社会保険料の負担を軽減することができます。
しかし、事業年度の途中では役員報酬の変更は認められていないため、もし変更をお考えの場合は注意が必要です。
事業年度途中の改定は原則認められない
役員報酬は定期同額給与として、毎月の支給額が事業年度を通じて一定(同額)でなければなりません。
ただし、年一回だけ改定を行うことができます。
それは、期首から3ヶ月以内に行う改定です。
期首から3ヶ月以内であれば、増額でも減額でも自由に改定することができます。
そして、そこで決めた役員報酬はその事業年度が終了するまで同額を支給しなければなりません。
原則として、事業年度の途中での改定は認めらていません。
3月決算で言えば、ちょうど今が改定できる時期です。
決算が終わって株主総会を開いて、そこで役員報酬の額を決めて、5月又は6月から改定するというのが基本的な改定の流れです。
事業年度の途中で改定するとどうなるのか?
事業年度の途中で役員報酬を改定すると、その一部が経費として認められなくなります。
例えば、役員報酬を100万円支給していたが、期中で50万円の増額をして150万円で支給したとします。
その増額した部分は経費として認められません。
図で表すと下のようになります。
赤色の部分(50万円×6ヶ月)=300万円が経費として認められないことになります。
そして、今回のテーマでもある減額の場合も経費で認められない部分が出てきます。
例えば、役員報酬を150万円で支給していたが、期中で100万円に減額して支給した場合は、当初から100万円で支給していたものとして差額分が経費として認められないことになります。
図で表すと次の感じです。
赤色の部分、50万円×6ヶ月=300万円が経費として認められなくなります。
経費で認められないということは、利益が0円であれば、増額や減額した分の法人税を支払わなければならないことになりますし、利益が出ていればさらにプラスαで法人税がかかってくるということです。
ですので、役員報酬の改定には注意が必要です。
例外的に減額が認められる場合がある
今回の新型コロナウィルス感染症の影響のように、想定できなかった事情が起き、経営状況が著しく悪化した場合は、税務上、業績悪化事由により役員報酬を減額改定することが認められています。
この業績悪化事由には、会社の事業経営が倒産の危機に瀕している場合などが該当します。
また、現状では財務諸表の数値指標が悪化しているとまでは言えないものの、役員報酬の減額などの経営改善などの対策をとらなければ、今後の事業経営の見通しが悪化することが避けられない場合などが該当します。
ただし、一時的な資金繰りの都合や単に業績目標に達しなかったことなどは業績悪化事由に含まれないとされているので注意が必要です。
正直、税理士でも判断に迷います。
売上が激減して、従業員の賞与などを減額せざるを得ない状況になるとか。
金融機関からの融資について、返済猶予の条件として役員報酬の減額が含まれているといった状況。
資金繰りの状況や倒産の危機に直面しているなど、客観的に見て、役員報酬を減額せざるを得ない状況だということを示す必要があります。
そのためにも、売上の激減や資金繰りの悪化がわかる月次の試算表や資金繰り表、従業員の賞与や役員報酬の減額に至った検討時の資料、金融機関との交渉時の資料などを保存しておきましょう。
まとめ
今回のように、想定外の業績悪化で役員報酬の減額をせざるを得ない状況というのはあります。
ただし、事業年度の途中での改定は原則認められていません。
役員報酬の減額を検討する際は、必ず税理士に相談しましょう。