おはようございます。
茨木市の税理士、三松です。
今回は、美容室などが消費税を計算する場合に簡易課税制度を利用した場合の注意点についてお話したいと思います。
簡易課税制度について
消費税は、売上代金としてお客様から預かった消費税から、仕入代金や経費の支払いとして支払った消費税を引いた差額を税務署に納める仕組みとなっています。
消費税の仕組みについてはこちら⇒https://torakichi-tax.com/syouhizei/
このように、預かった消費税から支払った消費税を差引して納税額を計算する方法を「本則計算」とか「一般課税」と言われてます。
一般課税の場合、売上に対する消費税と仕入や経費に対する消費税のどちらも記帳して把握しないといけないので、なかなかたいへんです。
経理担当者がいない小規模事業者などは、「消費税の計算がややこしくてできない」となってしまいます。
そこで、小規模事業者でも簡単に消費税の計算をできるようにしたのが簡易課税制度です。
簡易課税制度の消費税の計算は、売上に対する消費税にみなし仕入率という一定の割合を乗じて計算する方法です。
売上の消費税に割合をかけるだけで、消費税の納税額が計算できますので簡単です。
ちなみに、みなし仕入率は事業区分によって下記のようになっています。
事業区分 | みなし仕入率 | 該当する事業 |
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業 |
第3種事業 | 70% | 建設業・製造業など |
第4種事業 | 60% | 飲食店、加工賃を対価とする役務提供など |
第5種事業 | 50% | サービス業など(飲食店を除く) |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
簡易課税制度を適用できるのは、基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下の事業者となっています。
また、簡易課税の適用を受けるためには適用を受けようとする事業年度が始まる前に「簡易課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
なお、簡易課税を選択すると2年間継続適用しなければならないという注意点があります。
設備投資を控えているなど支払う消費税が増えそうな場合は、シミュレーションが必要になります。
判断に迷われる場合は、選択適用について税理士さんに相談することをおすすめします。
美容室の簡易課税を選択する場合の注意点。事業区分は二種類に該当する
簡易課税制度の説明が長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
美容室などサービス提供がメインの業種では、人件費が経費の大部分を占めるため、仕入や経費といった支払う消費税がないため簡易課税を選択する方が消費税の納税額が少なくなる場合があります。
そこで、美容室が簡易課税を選択した場合に注意しなければならないのが事業区分です。
美容室の事業区分は第2種事業と第5種事業の二種類に該当することになります。
まずは、カットやカラーリングといったサービスは第5種事業に該当することになります。
そして、シャンプーやワックスといった商品の販売が第2種事業に該当することになります。
もちろんお店の業態によって他のサービスの提供や販売を行っている場合は、違う事業区分に該当することもありますが、基本的にはこの二種類の事業に該当することになります。
この二種類の売上をしっかり区別して経理することが、消費税の納税額を少なくする一つのポイントです。
二種類の事業区分に該当する場合は、区分経理で納税額が下がります
簡易課税制度で、二種類の事業区分に該当している場合は、それぞれの事業区分ごとに区分経理することで納税額が少なくなります。
つまり、カットなどのサービス提供の売上とシャンプーなどの商品販売の売上をしっかり分けて経理するということです。
分けて経理することで、商品販売についてはみなし仕入率80%と高い率を使用することができます。
では、区分経理していない場合はどうなるのでしょうか?
区分経理していない場合は、区分していない事業のうち最も低いみなし仕入率を適用して計算すると規定されています。
つまり、商品の販売であってもサービスと同じ50%のみなし仕入率で計算するということになります。
具体例でみてみましょう。
サービスの売上 110万円(うち消費税10万円) 商品の販売 55万円(うち消費税5万円)
区分経理した場合
控除税額 (5万円×80%+10万円×50%)÷(5万円+10万円)=60%
納税額 15万円 - 15万円×60% =60,000円
区分経理しない場合
納税額 15万円 - 15万円×50% =75,000円
このように、区分経理する場合としない場合で納税額が変わってきます。
めんどくさいかもしれませんが、サービスの提供と商品の販売を区分して経理する方が税金面でお得です。
まとめ
美容室の簡易課税制度を適用する場合の注意点についてまとめてみました。
消費税の計算は難しいです。
簡易課税を適用するといっても、事業区分の判定や本則と簡易どちらの計算が有利になるといった判断に迷う部分もあると思います。
そんなときは、ぜひお近くの税務署か税理士さんに相談してみましょう。