所得税の「基礎控除」の改正や「所得金額調整控除」の創設によって、令和2年分の年末調整では、申告書が大幅に変更されます。
従業員さんが申告書を誤りなく記入、提出できるように、経理担当者は前もって変更の内容を確認し、事前に説明できるようにしておきましょう。
3つの申告書が1枚の用紙になります。
令和2年分の年末調整では、今まで使用していた扶養控除等申告書がリニューアルされます。
①基礎控除申告書
②配偶者控除等申告書
③所得金額調整控除申告書
これらの3つの申告書が、「基礎控除申告書兼配偶者控除申告書兼所得金額調整控除申告書」という1枚の用紙になります。
なお、①基礎控除申告書と③所得金額調整申告書は今年から新たに新設された用紙になります。
新しい申告書は、こんな感じです。
初めて見る様式ですので、やはり少し戸惑ってしまうかもしれません。
普段経理や税務に携わっていない従業員さんなら、なおさらです。
しっかりと説明できるように理解しておきましょう。
なお、この申告書の他に、例年通り「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」なども提出が必要になります。
新しい申告書の記入パターン
「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という新しい申告書の記入は6パターンあります。
従業員さん(納税者本人)の収入金額、配偶者や扶養家族の有無などによって、以下のように6つの記入パターンがあります。
上記の表をまとめると、次の通りです。
①基礎控除申告書
年末調整の対象者(年間の給与総額が2000万円以下の人)全員が提出します。
②配偶者控除等申告書
配偶者がいる人で、配偶者特別控除を受ける人が提出します。
③所得金額調整控除申告書
給与等の収入金額が850万円超の人で、下記の要件のいずれかに該当する人が提出します。
<要件>
①納税者本人が特別障害者
②同一生計配偶者が特別障害者
③扶養親族が特別障害者
④扶養親族が年齢23歳未満
給与等の収入金額が、850万円を超える可能性がある人は記入、提出が必要になります。
記入上の注意点
基礎控除申告書・配偶者控除申告書には、納税者本人と配偶者の「本年中の合計所得金額の見積額」を計算する欄がありますので、給与の「収入金額」から「所得金額」を求める必要があります。
所得金額の求め方は次の通りです。
従業員さんが、申告書を提出する時期には、12月分の給料が確定していないため、以下の手順で、まずは令和2年中の収入金額(年収の見込み額)を計算して、それを基に「所得金額」を求めることになります。
まず、1月~11月に支給された給料と賞与の明細書に記載された「課税支給額」を合計します。
次に、給与明細書の課税支給額をベースに12月の給料と賞与の見積額を計算して、先の課税支給額の合計額に加算して、収入金額を求めます。
式で表すとこんな感じです。
1月~11月の課税支給額(賞与含む)の合計額 + 12月の課税支給額(賞与含む)見積額
= 収入金額
上記で求めた「収入金額」から、給与所得控除の金額を控除した残額が「所得金額」になります。
給与所得の金額の計算方法の表に、「収入金額」を当てはめれば、給与所得の「所得金額」を求めることができます。
なお、所得金額調整控除の適用がある場合には、その金額を控除します。
給与以外に収入がなければ、この「所得金額」が「本年中の合計所得金額の見積額」になります。
生命保険の一時金や家賃収入など他の所得がある場合は、「給与所得以外の所得の合計額」として、本年中の合計所得金額の見積額にプラスすることになりますので、ご注意ください。
年末調整業務の流れと注意点
1.従業員へ申告書を配布し、注意事項を説明する。
従業員さんに各種申告書を配布し、注意点を説明するようにしましょう。
「基礎控除申告書」や「「所得金額調整控除申告書」については、提出の有無や記載内容についての説明が必要となることが考えられます。
2.従業員さんから申告書を回収し、内容をチェックする。
提出期日までに、従業員さんから申告書の提出を受けた後、記載内容の確認、計算結果の検算を行い、不備があれば差し戻して修正してもらいましょう。
年末が近づくにつれて、仕事も忙しくなることが考えられます。
申告書の回収が年末調整業務の一つのポイントです。
早めに回収できるように、アナウンスを徹底しましょう。
3.年末調整の計算
提出された申告書の内容をもとに、給与計算システム等に入力して、年末調整の計算を行います。
計算が終われば、年末調整の結果を従業員に通知します。
4.法定調書の提出
年末調整が終わっても、税務署への法定調書の提出が残っています。
翌年1月末までに、税務署に法定調書を提出するようにしましょう。
まとめ
今年は、年末調整の申告書の様式や記載方法が大幅に変わることで、従業員さんから提出される申告書の記載ミスや記載もれの増加が予想されます。
経理担当者の業務負担が増えないように、内容を確認して従業員さんにしっかり説明できるようにしておきましょう。
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