おはようございます。
大阪の税理士、三松です。
今回も消費税の増税に絡めたお話です。
増税前の駆け込み需要は低調
10月1日より消費税率が8%から10%に改定されます。
1,080円で購入できていたものが、1,100円なります。
9月中に購入しておけば、同じ商品でも2%分安く購入できることになります。
このように、消費税の増税前に駆け込みで消費者が購入することを駆け込み需要といいますが、前回の5%から8%に増税された時ほど騒がれておらず、今回は低調だそうです。
政府が駆け込み需要の反動減の対策として、キャッシュレスポイント還元事業など増税後に買ってもお得だといった対策を打ち出していることも一つの理由だと思います。
また、不動産や車など金額の高いものであれば、2%の増税分で大きく金額が変わりますが、日用品などの消耗品は2%上がったところでたかがしれているといった感覚があるのかもしれません。
5%から8%になった前回の増税からあまり期間がたっていないこともあり、増税に慣れ、必要でないものをあわてて買ってもあわてて仕方ないといった考え方があるのかもしれません。
確かに、必要ないものを無駄に買うことはよくありませんが、一般消費者であれば、日用品などの消耗品は前もって9月中に購入しておけば2%分安く買えることになります。
もちろん飲食料品など軽減税率の対象となるものは関係ありませんが…
課税事業者は駆け込み購入に意味があるのか?
一般消費者は増税前に購入することでメリットがあります。
では、会社や個人事業主で消費税の課税事業者となっている者にとって駆け込み購入は意味があるのでしょうか?
課税事業者にとって駆け込み購入は意味がありません!
課税事業者とは、消費税を税務署に納税している会社や個人事業主のことです。
消費税の計算は、お客様から預かった消費税から自分が支払った消費税を差し引いた残りを税務署に支払う仕組みになっています。
増税前に購入すれば、税務署へ支払う消費税の額が多くなり、増税後に購入すれば、税務署へ支払う消費税の額が少なくなる、ただそれだけです。
損も得もありません。
数字で見てみましょう。
お客様に商品を税込10,800円で販売したとします。この時預かる消費税は800円です。
駆け込みで9月中に税込5,400円の消耗品を購入したとします。支払った消費税は400円です。
この取引しかなかった場合、税務署に支払う消費税は
800円(預かった消費税)-400円(支払った消費税)=400円 となります。
では、消耗品の購入が10月以降の増税後であった場合はどうなるのでしょうか?
増税後なので、税込5,500円で消耗品を購入することになります。支払った消費税は500円です。
税務署に支払う消費税は
800円(預かった消費税)-500円(支払った消費税)=300円 となります。
増税後に買えば税務署に支払う消費税が安くなりました。
これが、消費税の課税事業者が増税前に駆け込み購入しなくてもいい理由です。
増税後に購入しても節税になるわけではない!
増税後に購入したからといって節税になっているわけではありません。
先ほどの例で説明しますと、増税前の場合、消耗品の購入先に支払った消費税が400円、税務署に支払った消費税が400円と合計で800円の消費税を支払っています。
一方、増税後の場合は、消耗品の購入先に支払った消費税が500円、税務署に支払った消費税が300円と、こちらの場合も合計で800円の消費税を支払っています。
このように、増税後だから税務署に支払う消費税が少なくなって節税になったのではなく、消費税の支払先が、「購入先」か「税務署」になるのかが変わるだけです。
ですので、増税前に購入しようと増税後に購入しようと損得はありません。
もちろん、増税前に購入すれば資金繰りは一時的に楽になるというメリットはあります。
ただ、納税時の消費税が増えるので、しっかりお金を残しておくということが必要になります。
今回は課税事業者を前提に、消費税の増税前の駆け込み購入しなくていい理由を書きましたが、免税事業者や課税事業者でも簡易課税制度を採用している事業者については、増税前に購入する方がメリットがあることもありますのでご注意ください。
まとめ
消費税の計算方法は、預かった消費税と支払った消費税の差額です。
増税前であれ増税後であれ、消費税の課税事業者については、損得がないということをご理解いただければと思います。